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東名高速浜松西IC近くには、大きなPCショップがある。ノズ・コレは、たまにそこを覗くのが最近の慣例になっていた。 「PCを見るついでに、高速道路で燃費を測ってみよう」 と心が動いた。
東名に入る前に、浜松ICでクルマから下りて、当日の交通量や風の具合をチェックする。特別な意味があるわけでもないが、コンセントレーションを高める準備体操とでも考えてもらいたい。 学生時代にノズ・コレは、トラックドライバーの助手のアルバイトをしたことがある。相手のトラッカーが高速道路に入る前に、必ず、タイヤチェックを行い、小石をタイヤ溝から取り除く作業をしているのを、彼は見ている。小石が、高速走行中のタイヤバーストを誘発するのを警戒しての作業だと思うが、そこにトラッカーのプロ意識が伺われる。 |
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東名高速に入り、浜松西ICに向かう。 「風が強いっ」 交通量は少ないが、想像以上に向かい風が吹いている。いつもの軽いはずのアクセルペダルが重く感じられるのが、よくわかる。ここ浜松では、冬になるとアルプスの山々から平野部の方向に、遠州地方特有の乾いた突風が吹き荒れる。これを「空っ風」(からっかぜ)と読んでいるが、今日はとりわけ強い。 運転席に取り付けてあるHKS社のCAMP(デジタル燃費計)の瞬間燃費表示を見ると、期待するような数字が出てこない。どんなに頑張っても25km/L以上は現れない。 ところでヴィッツはセンターメーターだ。CAMPとセンターメーターとウインドウ越しに見る景色が一直線に繋がるのが、画像からわかるだろうか? つまり、ドライバーのアイポイントの動きが直線的で、他の車種のように3角形の面積を形作ることがない。目は疲れないし、視野にすぐ飛び込むし、前方視界を外すこともない。これが、ヴィッツの特長だ。 |
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前方にタンクローリーを見つけた。 ほどなく追いつくが、ちょうど良い流れのタンクローリーの後ろで、向かい風プラス 空気抵抗をしのぐ。 エアロパーツを装着したとき、その効果が現れ始めるのは、およそ80km/hという。速度を上げすぎては、空気抵抗によって、エンジンのパワーロスにつながる。したがって燃費は悪くなる。反対に速度を下げすぎては、他のクルマの流れを乱すことになってしまう。 高速道路では、必ず、ダンゴ状になって走るクルマの1群がある。高速道路上でそのような群れにぶつかれば、不必要な加減速を強いられるので、それらダンゴ状のクルマの群れより、若干、低めの速度設定をする。 こうして、なるべく一定の速度を保つことが、高速燃費を良くするポイントになる。それに空気抵抗による走行ロスを加えて考えれば、おのずと最適速度がはじき出される。 |
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浜松西ICから降りる。 浜松IC〜浜松西ICの区間燃費を見ると、20km/Lちょっと。夏に菊川IC方面を走ったときでも28〜30km/Lはマークしていたのだから、向かい風の影響は想像以上に大きい。 久しぶりに走った高速道路の最低記録は、どうしても納得いかない。それは、ノズ・コレを熱くさせる。 「帰路がある。やってやろうじゃないか!」 |
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今度は、浜松ICに向かう。去年の10月に区間燃費32.6km/Lを記録したゲンのいいコースである。 あのときは東名が集中道路工事をしていたので、区間全体は50km/h規制となっていた。そこでスイートスポット(燃費の一番おいしい速度帯)を狙ったノンストップ走行が可能となったので、待望の30km/L台が生まれたのである。 今日は往路と違って、追風となる。遠州の空っ風が味方となって、懸命に後押ししているようだ。車間距離に注意しながら、前方大型トラックのかなり後方のエアポケット入り口をキープする。追風とエアポケットによる空気抵抗減少で、CAMPの瞬間燃費が跳ね上がっているのがわかる。アクセルワークは、瞬間燃費30km/L台をキープしながら、時折フューエルカットの繰り返しを多用しているが、40km/L台が頻繁に表示される。 CAMP表示では、区間燃費の数字更新直前には、これまでの最高の52km/Lが表示されたので、更新直後の33.4km/Lオーバーを確信した。 |
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CAMPの説明。 1番上の上段が、東名浜松西IC〜浜松IC区間のデータ表示である。 08.57/TIME/所要時間 10.4 /DISTANCE/区間燃費 00.3 /FUEL/燃料消費量 34.6 /COST/区間燃費 69.7 /SPEED/平均速度
このうち、平均速度は、本線以外のランプウェイ、料金所手前の減速も含まれる全体の平均の速度である。本線のみの平均速度を考えれば、これより10km/hばかり上回るはずだ。 最上段の「34.6km/L」は、燃料消費量「0.3L」に更新された直後に、STOPボタンを押して、計測を止めた値である。ちなみに第2段以下の平均燃費15km/L台は、冬のシルビィの実用燃費。CAMPは正直だ。 |
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「やったぞ! ヴィッツで3リッターカーを達成した」 とうとう、シルビィが33.4km/Lを突破。
ところで誰が『3リッターカー』とネーミングしたのだろう。100kmを燃料3Lで走れるクルマ。すくなくとも日本人ではなさそうだ。日本式で燃費表示すれば、えらく半端な数字となるから、欧州人あたりだろう。 ヴィッツを購入してから、およそ9ヶ月だ。10・15モード燃費19.6km/Lのクルマを1.7倍の燃費にまで引っ張り挙げる。ノズ・コレは以前、レガシィ(1.8L Mi 4WD 4AT)を100km区間満タン法で21.1km/Lまで高めたのだから、充分、射程距離内にあると読んでいたのかもしれない。某HPで、ノーマル・ヴィッツは30.4km/Lをマークしているのを知ってから、俄然やる気がおこったのだろう。 しかし、たかが、10km区間でのこと。クルマ・走行区間・運転方法などの条件が揃えば、みなさんにとっても非現実的な数字ではない。 |
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ノズ・コレは思う。 短区間で、0.3%の勾配を持つ片道での、大型トラックを追走した追風参考記録。 たかが34.6km/Lだ。インチキ走法だと笑うドライバーもいるだろう。 「要は走り方次第さ」
30年以上も昔になるが、自転車で200km/h挑戦の雑誌記事を読んだことがある。「ドミフォン・サイクル」とかいって、馬鹿デカイ大ギアでペダルをこぐ。ギア比がとてつもなく大きいので、理論的には可能とのこと。その自転車で、自動車に前を走ってもらい空気抵抗を極力減らして走ると、200km/hがでるのだという。 ガソリン車部門のギネス記録は、ハイブリッド車のインサイトによる36.33km/L。イギリスの海岸線の起伏に富んだコースを、5600km走りきった平均燃費である。 純血ガソリン車とはいえ、ノズ・コレの燃費参考記録は、ほんの瞬きくらいでしかないのだ。 |
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天竜川河川敷で、シルビィは足を休める。 あれから6日が過ぎたが、今日は遠州の空っ風もなく、穏やかな日である。 木々の小枝は、すこしも揺れてはいない。そのむこうでは、どこかの家族がサッカーを楽しんでいる。 休日というのにあたりにひと気がないのはなぜだろう。 冬の寒さのために戸外に出たがらないのか、どこかよそで面白いアトラクションが客足を誘ったためだろうか? シルビィの外観は、どこでも走っているシルバーメタリックのヴィッツと何ら変わらない。しかし、驚くほど小食である。 その素顔は、向こうでスポーツをしている家族にもわからない。 |